自己紹介④

これまでの経験で、「生き物」は環境や食生活で個体差が大きく出る事が分かりました。
人間も如実に現れます。
僕は「食べ物」「飲み物」「運動量」「ストレスレベル」最後に「血統・系統」だと思っています。
先ほどのゲージに入れられていた合鴨達は排泄物まみれでした。
動物は本能的に自分の排泄物からは距離を置こうとします。
その意味ではストレスは相当だったのでは無いでしょうか?

逆に全ての条件を満たすと味が最高に良くなります。
もはや食べなくても分かるのです。

客観的にどれぐらい美味しいのか?
いくら自分で「美味しい美味しい」と言っても分かってもらえません。
「モノサシが欲しいな〜」と思っていた所に同期のシェフから連絡があり、一緒に食材探しのツアーをテレビ局も一緒に行く事になりました。

同期のシェフは国内の某レストランに入店して1つ星の獲得に貢献(現在は2つ星に昇格)した後、フランスニースをはじめ星付きから新進気鋭の立ち上げでセクションシェフや欧州を廻って帰国。
古巣の仲間達と虎ノ門ヒルズに出店の機に連絡がありました。

そして実際に長崎に来て一緒に合鴨を見て回り、東京で試食してもらい、「美味いね!」とコメントを頂くレベルでした。(銀座のお師匠さんにも美味しいと評価を受けました。)

そして「で、いくらするの?」

私「〇〇円です」

「それは無理だね…」

即答でした。
そう。
「ちゃんとした食べ物は、高くなる」という事を身を以て体験した瞬間でした。

きちんとした環境で、きちんとした餌で、きちんと広々とした所で運動して、きちんと生きた動物は高くなり過ぎるのです。

銀座ですら出せないんですよ。
「ちょっと待って!じゃ、高級レストランで出してる鴨って一体どんな鴨なのさ!?」
「あー、それはね、K鴨とか有名で美味しいって評判で有名シェフ達が使ってるんだけどさ、実際見に行ったら臭くて近づけなかったよね。」
という言葉が出てくるんですよ。
話を聞いたら合鴨の6倍ぐらい大きくなる様で、それは流石に価格も落ちますよ。

裏側を知っている自分ならハッキリ食べたく無いと言えます。
できれば使いたく無いとも思います。
しかしながら利益を出さなければいけないレストランでは、使わざるを得ないのです。
お客さんが「美味しい」と満足して、料理評論家達が太鼓判を押していくならそれで問題無いのです。
逆にどんなに良い条件下で育てようと、利益が出ない、消費者の需要を超えた価格帯になると売れなくなって立ち行かなくなるのです。
その現実を目の当たりにしたのは28〜29歳の頃でした。
この現状を知り、すぐに出会うのが「花房和牛」でした。


古い記事 新しい記事